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About Trees

– 樹木のこと –

– 樹木の生態を知る

私たちが生きて行く上で欠かす事が出来ない樹木たちは、住み心地が悪くなったからと言って自らの意志で引っ越しをする事が出来ません。人の手によって植えられる場所を決められた場合を除けば、樹木は本来自らに適した環境でなければ発芽しないか、幼木のうちに枯れてしまう事がほとんどです。言い換えれば、自生している樹木はその環境が適しているからこそ発芽したと言えます。そうした樹木は生存競争という自然淘汰に晒されながらも、自らの置かれた環境に適応し、自由に枝葉を伸ばす事で私たち人間の力を借りることなく成長しています。

樹木は頂芽優勢の性質に伴って枝葉を外へ外へと大きく伸ばしてゆく過程で、日当たりの悪くなった樹冠内部の枝葉や病気に感染した部位、強風や積雪で折れた枝を自ら枯らし、やがて地面に落とします。それらは腐朽菌によって分解され、微生物が暮らす豊かな土壌環境が形成される事で自らの肥やしとし、直射日光による地面の乾燥を防ぐ役割も果たします。子孫を残す段階においては満開の花を咲かせ、結実した実は豊かな土壌に落ちたり、動物たちに運んでもらう事で再び自身に適した環境で発芽します。

樹齢数百年を経た大木の雄大な姿は、その場所で環境の変化に耐えながら懸命に生きた樹木の記憶そのものです。よく耳にする「剪定をしなければ花が咲かない」「風通しが悪くなって病気になる」という言葉には、少し語弊があるかも知れません。長い年月をかけて、まるで自らの体を剪定するようにして、それぞれの樹種の本来の姿である風通しの良い”自然樹形”が形作られ、私たちが生まれるより遥か昔から咲くべきところに花は咲いています。

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推定樹齢500年を超える平久保のシイ(東京都多摩市)
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ユーカリの巨木(ニュージーランド,クライストチャーチ)
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推定樹齢1000年を超える誓願寺のソテツ(香川県小豆郡小豆島町)
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手付かずでも満開に咲き誇る保存樹木のツバキ(東京都府中市)

– 根と葉は対をなす

「樹木の根はどれくらい広がっているのか?」を知るには(人間の手によって大きく切り詰められた場合を除けば)、その樹木の本来の樹冠(地上部に伸びている部分)の輪郭を観察すると分かり易いかも知れません。根の成長には酸素を必要とする為、あまり呼吸が苦しくなる地下深くまで張る事はありませんが、横方向には根と葉はほとんど同程度まで広がっていると考えるのが自然です。

私たちが木の下で雨宿りをする時、周囲の最も水滴が滴る場所には、樹木にとって水分を吸収する為の生命線とも言える細根が広がっています。それは私たちが雨の日に傘を差した時のように、茅葺き屋根から水が滴り落ちるように、樹木は少ない雨でも効率良く細根に水分を届けられるように枝葉を茂らせています。

そうして細根から吸収された水分は、幹を通って枝葉を茂らせ、陽の光を浴びて光合成を行う事によって作られた養分は再び幹を通って根に送られます。一方通行と誤解されがちな根と葉の関係性は双方向に成り立っているのです。

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– 人はなぜ樹木を剪定するのか

では、私たちはなぜこれほどまでに自らの生命と向き合っている樹木に対して手を加えようとするのでしょうか。“樹木を剪定する”という行為は、”樹木に傷口を作りダメージを与える行為”に他なりません。その生態について理解しようとすればする程、「ひとつの樹木の中で不要な葉っぱなど一枚たりとも無いのではないか」と思えてしまう程です。

人間が生活を営む環境に置かれた大きな樹木の立場は、近年非常に肩身の狭いものとなっています。「隣地に越境している」「枯れ枝が落ちて人や車に当たる」「落ち葉で雨樋が詰まる」「陽の光が入らない」「枝が電線に絡む」「根っこがアスファルトを持ち上げてしまう」。私たちが生きて行く上で欠かす事の出来ない樹木たちは、例え私たちが生まれるよりも遥か昔からそこに存在していたとしても、時には邪魔者扱いされてしまうのです。

突き詰めて考えると、私たちが樹木を剪定する理由は、収穫を目的とした事由を除けば、「人間の営みに合わせた形と大きさに調整したい」という点に集約されます。本来、人間の力を借りる事なく成長する事が出来る樹木に手を加える理由もまた、人間によるところが大きいのです。

盆栽があれほどコンパクトな樹形を長年維持出来るのは、地上部分の剪定作業の他に、鉢によって根の成長を抑制し、植え替えの度に根詰まりを防ぐ為の”根の剪定”を施す事で、地上部分と地下部分のバランスを保ち続けているからです。地面に根を下ろした大きな樹木の場合、都度根っこの剪定を行う事はあまり現実的ではない為、大きさを維持したい場合は定期的に地上部分の剪定を行う事で樹形のコントロールを行う必要があります。

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電線に干渉しつつあるシラカシの大木。 放置しても樹木は健全に育つが、直下には道路が通っている為、人間の営みと共存してゆく為にサイズのコントロールを行う必要がある。
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剪定作業後。 樹木に過度なダメージを与えないよう、枝葉を残しながら支障枝を取り除いた様子。
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剪定から3年後の様子。 樹冠内部に健全な中枝や短枝が育っている為、将来の剪定時にも枝葉を残しながらサイズを縮める事が出来る。

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