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With Trees

– 私たちが目指すもの –

– 樹形をコントロールする為の”自然風剪定”

私たち造園家が日々行っている”自然風剪定”は、“自然を模した庭”という限られた空間の中で、それぞれの樹種が持つ本来の美観を損なわずに、樹木の健康と景観のバランスを維持する為の技術に他なりません。これは同じ剪定でも、”無節の木材”としての商品価値を高める為に林業分野で行われる枝打ちとは全く異なる考え方です。

自然風剪定においては、樹木の大小に関わらず、それぞれの樹種が持つ本来の自然樹形を念頭に置き、剪定を施した後でも枝葉が残るよう樹木へのダメージを抑えながら「どこを切ったか分からないけれど、確かにサイズは維持出来ている」という状態を理想としています。その為には、定期的な剪定作業において、樹冠内部への陽当たりを確保し、萌芽力を分散させる事で将来の剪定の基準となる中枝と短枝を育てる透かし剪定が必要不可欠となります。

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自然風剪定によってサイズを維持し、樹冠内部に適度な光を取り込んでいるクスノキの大木。
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透かし剪定によって、樹冠内部の枝を枯らす事なく長年サイズを維持している庭木。
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人間の営みと共存しながら樹形を維持している府中市のケヤキ並木。

一度の作業で大きく枝を切り詰める強剪定を行う事で、一時的に樹形を縮める事は可能ですが、枝葉を失った樹木は命の危険を察知し、身体の至る所に点在する休眠芽から膨大なエネルギーを使って大慌てで葉を芽吹かせます。それは樹木本来の美観を著しく損なう異常樹形を形成し、対をなす根系の萎縮や病害虫への抵抗力の低下を招き、樹木に大ダメージを負わせる結果に繋がってしまいます。芽吹く力を失った大きな枯れ枝が、私たちの生活を脅かしてしまう事もあります。

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強剪定によってほとんどの枝葉と葉芽を失ったケヤキ。
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強剪定から約1年後のケヤキの様子(前写真とは別の個体)。至る所から休眠芽が芽吹き異常樹形を形成している。
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過度な強剪定によって枯死した直径20cm程度の太枝。

主に低木の樹形を維持する方法として、樹種の特性である萌芽力を生かして、枝の表面だけを切って丸や四角に刈り込み仕立てを行う事があります。整った形は見栄え良く、管理も楽な為、庭園作りには欠かせない手法ですが、大きな樹木に対して同じようなお手入れを施した場合はどうでしょうか。樹冠の内部は薄暗くなり、葉のついた中枝や短枝はほとんど育っていない為、いざサイズを縮めたい時には、枝葉を残さない程の強剪定を施すほか方法が無くなってしまいます。“樹木に過度なストレスを与える事無く樹形をコントロールする”という観点からも、”自然風剪定”は大きな樹木を扱う上で理想的な技術と言えます。

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刈り込みによって端正に整えられたツツジ。
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刈り込みによって枝が密集して樹冠内部は薄暗くなり、枯れ枝が目立つ。葉のついた短枝や中枝はほとんどない。

– 目指すのは樹木と人にとって”ちょうどよいところ”

樹木の健康状態を無視し、適期を逸脱した過度な強剪定が、時には樹木を枯死させてしまったり、樹勢を著しく衰弱させてしまう事は珍しくありません。「樹木を生き永らえさせたい」と願って人間が行った行為が、樹木本来の美観を著しく損なうどころか、時には真逆の結果に繋がってしまう事があるのです。“樹木という生き物”を扱う上で、誰しもが想定外の失敗を経験します。出来る事なら、なぜ失敗したのかを考え、その生き物に対する理解を深める事で、失敗を少しでも減らしてゆく努力が必要です。

先人が私たちに残してくれた”樹木という財産”を失う事はとても簡単です。たとえ樹齢数百年を超えるような樹木でも、たった数時間のうちに跡形もなく伐採してしまう事が可能でしょう。やむを得ない事情があるケースもたくさん経験してきましたし、そうした方々の力にもなってきました。

一方で、樹木をなんとか保存したいと願う声も、たくさん耳にしてきました。私たちTREE WOKERS TOKYOのメンバーは、大きな樹木を総合的に管理する専門チームとして、お客様のご要望を踏まえた上で、樹木と人間が共存出来る”ちょうどよいところ”を目指して、日々模索しながら作業を行っています。そして未来への財産として、私たちが樹木への理解を深める事で、樹木と人間の関係性はより良いものになると信じています。

Tree Workers Tokyo Drawing
Team logo designed & this drawing by Yuya Shiratori

– より安全で効率的な作業を求めて

大きな樹木を扱う作業は、常に危険と隣り合わせです。ロープワークの技術と機材の発達によって、従来よりもいくらか安全に作業を行う事が出来るようになった一方で、これまで不可能だった事が可能となり、これまで届かなかった場所に手が届くようになった事で、私たちのリスクは増大の一途を辿っているとも言えます。未だ発展途上のこの分野において、技術や機材における新しい情報や、危険予知に関する認識の共有は必要不可欠です。

私たちはツリーワークに携わる誰しもが不幸な事故に見舞われる事なく、木登りを楽しむ生活が送れるよう願っています。その為に、私たちはチーム内での情報の共有はもちろんのこと、事業者の垣根を超えた情報交換によって、互いを高めあえる関係を望んでいます。現場での作業や講習会を通じて、皆様にお会い出来る日を楽しみにしています。

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